※ 本記事はアフィリエイト広告を含みます。各サービスの評価はあくまで個人の体験・調査に基づくものです。
先に結論から書く。
退職日を月末にするか、その前日にするかで、社会保険料が1ヶ月分変わる。ただし「前日退職のほうが得」とは言い切れない。浮いた分がそのまま国民健康保険料と国民年金保険料に置き換わるケースがあるからだ。
自分が3年勤めた会社を辞めるとき、総務の人にさらっと「退職日、30日にしときます?」と言われた。意味がわからないまま頷きそうになって、慌てて調べた。あのとき調べていなかったら、たぶん数万円の判断を人任せにしていた。
この記事では、その仕組みと、自分の状況ならどっちを選ぶべきかの判断軸をまとめる。

なぜ1日ずらすだけで社会保険料が1ヶ月分変わるのか
ポイントは2つだけ。
1つめ。社会保険の資格を失う日は「退職日の翌日」。健康保険法36条2号に、退職などの事実があった日の翌日に被保険者の資格を喪失する、と書かれている。厚生年金も同じ考え方だ。
2つめ。保険料は「資格を喪失した月の分は取らない」。健康保険法156条3項に、資格を喪失した月分の保険料は算定しない、とある。
この2つを組み合わせると、こうなる。
- 3月31日退職 → 資格喪失は4月1日 → 喪失月は4月 → 3月分まで社会保険料がかかる
- 3月30日退職 → 資格喪失は3月31日 → 喪失月は3月 → 2月分までで終わり。3月分はかからない
たった1日。それで健康保険と厚生年金の1ヶ月分が消える。会社員の保険料は労使折半なので、給与額によっては本人負担だけで数万円になる。会社側も同じ額を払っているから、会社が「30日でどうですか」と提案してくるのは、正直、会社にとっても得だからという面がある。
月末退職だと最後の給与から2ヶ月分引かれることがある
これも知らないと焦る。社会保険料は「前月分を当月の給与から控除する」やり方の会社が多い。だから月末退職だと、最後の給与で前月分と当月分がまとめて引かれることがある。
自分はこれを知らずに最終給与を見て、手取りの少なさに一瞬血の気が引いた。計算ミスでも罰でもなく、単に仕組みどおりだった。
「前日退職が得」と単純化してはいけない4つの理由
ここからが本題。ネット上には「月末前日に辞めれば1ヶ月分浮く」という話が溢れているけど、そこで止まると足元をすくわれる。
1. その月は国保と国民年金に自分で入ることになる
健康保険は空白期間を作れない。3月30日に辞めたら、3月31日から国民健康保険(または任意継続、家族の扶養)に入る。そして国保料も国民年金保険料も、その月の末日時点で加入していれば1ヶ月分かかる。
つまり浮いたのではなく、払う先が会社の健保から市区町村と年金機構に移っただけというケースがある。しかも会社の保険料は労使折半だが、国保と国民年金は全額自己負担。前年の所得が高い人ほど国保料は重くなる。
国民年金保険料は毎年度改定される定額(近年は月額1万7千円台)。正確な額は日本年金機構の公表値を、国保料は自分の住む自治体の窓口かサイトで確認したほうがいい。自治体で計算方法がまったく違うので、ネットの平均値は当てにならない。
2. 厚生年金の加入月数が1ヶ月減る
厚生年金の被保険者期間は、資格取得月から喪失月の前月まで。前日退職だと、その月は厚生年金に入っていなかった扱いになる。将来もらえる老齢厚生年金が、わずかだが減る。
1ヶ月分なので金額としては小さい。ただ、国民年金への切り替えを忘れて未納にすると、老齢基礎年金の額と受給資格期間の両方に響く。ここは「小さいから放置」が一番まずいところだ。
3. 傷病手当金をもらう予定なら退職日の意味が変わる
心身を壊して辞める人にとっては、こっちのほうが金額のインパクトが大きい。
退職後も傷病手当金を受け取る(資格喪失後の継続給付)には、退職日までに健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あることと、退職日の時点で労務不能な状態であることが必要になる。加入がちょうど1年前後の人は、数日ずらしただけで要件を満たせなくなる可能性がある。
それと、退職日に出勤してしまうと継続給付を受けられなくなることがある。有給の使い方も含めて、健康保険組合か協会けんぽに事前確認したほうが確実だ。
4. 失業保険の被保険者期間の区切りが変わる
雇用保険の被保険者期間は、離職日から1ヶ月ごとにさかのぼって区切り、賃金支払基礎日数が一定以上ある月をカウントする。退職日をずらすと、この区切り位置がまるごと動く。
勤続がちょうど1年前後の人、途中で休職していた人は、1日の違いで必要な月数に届かなくなることがありうる。ハローワークで自分のケースを確認するのが早い。基本手当の受給要件や管轄窓口はハローワーク(厚生労働省)の公式サイトで確認できる。
3パターンを並べて比較してみる
| 退職日のパターン | 最後の月の社会保険 | その月の国保・国民年金 | 厚生年金の加入月 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| 月末(3/31) | 3月分まで会社の健保・厚生年金(労使折半) | 4月から加入 | 3月もカウントされる | すぐ転職先がある人/傷病手当金を使う人/扶養家族が多い人 |
| 月末前日(3/30) | 2月分まで。3月分はかからない | 3月分から自己負担で発生 | 3月はカウントされない | すぐ家族の扶養に入れる人/前年所得が低く国保料が安い人 |
| 有給を消化して翌月へ(4/30等) | 4月分まで会社の健保・厚生年金 | 5月から加入 | 4月もカウントされる | 有給が10日以上残っている人/賞与や勤続年数の区切りが近い人 |
表にしてみると分かるけど、「その月末に自分が誰の扶養にも入っていない」なら、前日退職の節約効果はかなり薄まる。逆に配偶者や親の扶養にすぐ入れる人は、前日退職で本当に1ヶ月分が消える。
あと見落としがちなのが有給。年次有給休暇は労働基準法39条で認められた労働者の権利で、退職前にまとめて消化すればその分だけ退職日は後ろにずれる。有給を全部使った結果、狙っていた「月末前日」からずれることは普通に起きる。逆に1日だけ有給を残して調整する手もある。賞与の支給日が近い人は保険料の1ヶ月分より賞与のほうが金額が大きいので、ボーナスの支給日と在籍要件から逆算した退職スケジュールも合わせて考えたほうがいい。
そもそも退職日は「交渉事項」だという話
ここまで読んで「じゃあ自分は前日退職にしよう」と決めたとして、次に立ちはだかるのが会社だ。
退職日は、労働者が一方的に決めきれるものではない。期間の定めのない雇用契約なら、民法627条1項で退職の意思表示から2週間で契約は終了する。この点は民法627条による退職の自由の解説で詳しく整理している。つまり「2週間後に辞める」ことはできる。でも「◯月◯日ちょうどにしてほしい」「有給を全部消化してから退職日を設定してほしい」という細かい希望は、会社との調整で決まる。
自分の場合、上司に「有給を全部使ってから辞めたい」と伝えたら、「引き継ぎが終わってからだろ」と一蹴された。理屈では自分に分があると分かっていても、目の前で不機嫌になられると言葉が出なくなる。あの感覚は、経験した人にしか伝わらないと思う。
業者のタイプで「交渉できるか」が変わる
ここが退職代行を検討するときの一番大事な分岐点だ。
- 一般企業が運営する代行:退職の意思を会社に伝達する。退職日や有給の日数を会社と交渉することはできない
- 労働組合が運営する代行:団体交渉権にもとづき、退職日や有給消化の希望を会社と話し合える
- 弁護士が運営する代行:交渉に加え、未払い賃金など法的な請求まで対応できる
「退職日を月末前日にしたい」「有給を14日消化してから辞めたい」といった希望がある人が一般業者に頼むと、伝達はしてもらえても、会社が首を縦に振らなければそこで止まる。交渉行為は弁護士か労働組合しか行えないからだ(弁護士法72条)。
自分が調べたときも、料金の安さだけで選びかけて、この運営形態の違いに気づいて選び直した。数千円の差で、希望が通るかどうかが変わるなら、迷う理由はなかった。
労働組合や弁護士が関わる退職代行サービスなら、退職日の希望や有給消化を含めて会社側と話をしてもらえる。無料相談で「退職日を◯日にしたいが可能か」と聞いてみると、その業者が交渉まで対応できるかどうかがすぐ分かる。
あなたの状況別・次にやること
まだ在職中で、自分で交渉できそうな人へ
まず給与明細で健康保険料と厚生年金保険料の本人負担額を確認する。次に自治体サイトで国保料の試算をする。この2つの数字を並べれば、前日退職と月末退職のどちらが有利かは自分で判断できる。そのうえで総務に希望日を伝える。
退職を切り出せない・引き止めが怖い人へ
退職日の希望まで伝えたいなら、交渉ができる運営形態を選ぶこと。相談は無料のところが多いので、退職代行サービスに「有給を消化して◯日付で退職したい」と条件を先に投げてしまうのが早い。
心身を壊していて、傷病手当金を考えている人へ
節約の話は後回しでいい。加入期間が1年に足りているか、退職日に出勤しない形にできるかを、協会けんぽか健康保険組合に先に確認する。ここを間違えると、数万円どころではない差になる。
よくある質問
Q. 会社から「30日退職にしてほしい」と言われました。断れますか?
A. 退職日は本人と会社の合意で決まるものなので、希望を伝えて話し合うことはできます。会社側にも保険料負担が減るメリットがあるので、提案の背景は理解したうえで、自分の国保料・扶養の有無と比べて判断してください。
Q. 月末前日に辞めたら、健康保険証はいつまで使えますか?
A. 資格喪失は退職日の翌日なので、月末前日退職ならその前日までです。翌日以降は国民健康保険・任意継続・家族の扶養のいずれかに切り替える必要があります。空白期間を作ると、医療費が一旦全額自己負担になります。切り替えの順番と期限は退職後にやるべき保険・年金・税金の手続きリストにまとめてあります。
Q. 任意継続と国民健康保険、どちらが安いですか?
A. 前年の所得が高い人は任意継続が有利になりやすく、所得が低い人や扶養家族がいない人は国保が有利になりやすい傾向があります。任意継続は資格喪失日から20日以内という申請期限があるので、退職前に両方の保険料を出してもらって比較しておくのが確実です。
Q. 退職日を自分の希望どおりにするのは、法律的に可能ですか?
A. 期間の定めのない雇用契約では、民法627条1項により退職の意思表示から2週間で契約が終了します。ただし特定の日付や有給消化の組み合わせについては会社との調整が必要です。個別の事情については弁護士や労働局にご相談ください。
💡 退職代行サービスを比較検討中の方へ
サービスごとに料金・対応範囲・スピードが異なります。複数を比較して、自分に合うものを選ぶのがおすすめです。
※ 上記はもしもアフィリエイト経由のリンクです。本記事の内容を参考に、ご自身の判断でご利用ください。
まとめ
退職日を1日ずらすだけで、社会保険料は1ヶ月分変わる。仕組みとしては単純だ。
でも、そこだけ見て決めると、国保料や年金の加入月数、傷病手当金の要件といったところで逆に損をすることがある。判断材料は「その月末に自分が誰の保険に入っているか」。これに尽きる。
そして、その希望を会社に通せるかどうかは、また別の問題だ。言い出せないなら、代わりに言ってくれる人を探せばいい。それは逃げじゃなくて、単に自分の手札を増やしているだけだと自分は思っている。
辞め方を細かく計算できるくらいの余力が残っているうちに、動いておいたほうがいい。自分は限界まで我慢して、最後は何も計算できないまま辞めた。あなたは悪くないし、有給も保険も、もともとあなたの権利だよ。


コメント