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先に要点だけ。
最低賃金を下回る約束で働いていても、下回った分の取り決めは無効です。
その場合は、最低賃金と同じ額で約束したものとして扱われます(最低賃金法4条2項)。
ただ、時給が据え置きでも、すぐに違法とは限りません。
今年の改定は都道府県ごとに10月1日から12月2日まで、発効日がばらばらだからです。
差額は辞めたあとでも請求できます。
なので「差額を取ってから辞める」か「記録だけ残して先に離れる」かは、今の体力で選んでいいと思います。
10月の明細を開いて、時給の欄が先月と1円も変わっていない。
ニュースでは「全国平均1,177円」と流れているのに、自分の職場だけ時間が止まっているみたいで、正直モヤっとしますよね。
しかも店長に聞くのは気まずい。
「細かいこと言うやつ」と思われたくないし、シフトを減らされたら困る。
そうやって黙っているうちに、辞めたい気持ちだけが育っていく。
この記事では、その気持ちを責めずに、まず数字で確かめる方法から話していきます。
この記事でわかること
- 令和8年度の最低賃金と、自分の地域の発効日の確かめ方
- 時給・月給それぞれで「最低賃金割れ」を給与明細から計算する手順
- 差額を請求してから辞める道と、退職代行で先に離れる道の違い
- 辞める前にスマホに残しておきたい記録

時給が上がらない=すぐ違法、とは限らない理由
今年の改定額と発効日
厚生労働省が公表している「令和8年度 地域別最低賃金 全国一覧」では、全国加重平均が1,177円。
前年度の1,121円から56円上がりました。
いくつか抜き出すとこんな感じです(いずれも厚生労働省の公表値)。
- 東京:1,280円(10月1日発効)
- 神奈川:1,279円(10月1日発効)
- 大阪:1,231円(10月1日発効)
- 愛知:1,195円(10月1日発効)
- 福岡:1,114円(10月4日発効)
- 京都:1,180円(11月16日発効)
- 沖縄:1,086円(12月2日発効)
ここが落とし穴なんだよ。
「10月に上がる」と思い込んでいると、京都や沖縄のように発効がもっと先の地域では、10月の時給が据え置きでも違反ではありません。
自分の都道府県の金額と発効日は、厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」のページで一度だけ確認しておくと安心です。
締め日をまたぐと、明細に出るのは翌月以降
もうひとつのズレが給与の締め日です。
たとえば「9月21日〜10月20日締め、翌月25日払い」の職場なら、10月1日より前に働いた分は旧額のままで問題ありません。
新しい金額が丸ごと反映された明細が届くのは、早くても11月の終わり。
だから、10月の明細1枚だけで「据え置かれた」と決めつけるのは少し早いかもしれない。
見るべきは、発効日以降に働いた時間に新しい額が当たっているかどうかです。
給与明細で「最低賃金割れ」を確かめる手順
時給の人:発効日以降の時給と比べるだけ
時給制ならシンプルです。
発効日以降の労働時間に付いている時給が、自分の地域の最低賃金を下回っていないかを見ます。
大阪で10月以降も時給1,180円のままなら、1,231円との差は51円。
月100時間働けば、1か月で5,100円ぶんの差になります。
51円と聞くと小さく感じるけど、半年積もれば3万円を超える。
黙って流すには大きい額じゃないかな。
月給の人:時間単価に直してから比べる
月給の人は、時給に換算しないと比べられません。
計算式はこれです。
(月給のうち対象になる賃金)÷(1か月の平均所定労働時間)
平均所定労働時間は「年間の所定労働日数×1日の所定労働時間÷12」。
会社カレンダーや就業規則で年間休日がわかれば出せます。
東京の例で一度計算してみます。
- 基本給198,000円+職務手当10,000円=208,000円
- 年間所定労働日数250日×8時間÷12=約166.7時間
- 208,000円÷166.7時間=約1,248円
東京の1,280円を32円下回ります。
最低賃金ラインに届かせるには月213,334円以上が必要なので、月あたり約5,300円が足りていない計算です。
計算から外す手当に注意
この記事のために電卓を叩いていて意外だったのが、ここでした。
通勤手当を足したまま計算すると、割れていないように見えてしまうんです。
最低賃金と比べる賃金からは、次のものを外します(最低賃金法施行規則で定められています)。
- 通勤手当・家族手当・精皆勤手当
- 残業代・休日出勤手当・深夜手当(固定残業代もここに含まれます)
- 賞与など、1か月を超える期間ごとに払われるもの
- 結婚手当など、臨時に払われるもの
「みなし残業込みで月25万」という求人は、固定残業代を抜くと基本給がかなり低いことがあります。
手取りの総額ではなく、明細の内訳で計算してみてください。

差額を取ってから辞めるか、記録だけ残して先に離れるか
法律の軸はこれです。
最低賃金法4条2項:最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で、最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。
この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。
ざっくり言うと、「時給1,180円で合意した」という部分は無効になって、最低賃金の額で約束したことになる、という意味です。
本人が契約書にサインしていても、この扱いは変わりません。
そして賃金を請求できる期間(時効)は、いまは原則3年です(労働基準法115条と附則143条)。
つまり辞めたあとでも、3年以内の分なら差額を請求する道は残ります。
「辞めたら損をする」と思って踏みとどまっている人には、ここが一番伝えたいところです。
選べる道を並べるとこうなります。
| 方法 |
費用の目安 |
差額の請求・交渉 |
向いている人 |
| 自分で会社に伝えて請求 |
かからない |
自分で行う |
職場の関係がまだ悪くなく、差額も話せそうな人 |
| 労働基準監督署に相談・申告 |
無料 |
監督署が調べて会社に是正を求めることがある(代わりに取り立てる機関ではない) |
記録がそろっていて、職場全体を直したい人 |
| 弁護士に依頼 |
着手金・報酬がかかる(事務所ごとに異なる) |
代理人として請求・交渉できる |
差額が大きい、残業代もまとめて請求したい人 |
| 労働組合が運営する退職代行 |
定額制が多い(公式サイトで要確認) |
団体交渉として話し合いができる |
辞めるのが先、でも条件の話もしたい人 |
| 一般企業が運営する退職代行 |
定額制が多い(公式サイトで要確認) |
できない(退職の意思を伝えるだけ) |
とにかく今すぐ職場と連絡を断ちたい人 |
ここは弁護士か労働組合でないと動けない。
差額の請求まで見込んでいるなら、交渉権のない業者に頼んでも、話がお金に及んだ時点で止まります。
逆に「お金はあとで考える、とにかく出勤するのがしんどい」なら、先に離れて、請求は落ち着いてから弁護士や監督署に相談する順番でも遅くありません。
どちらが正しいかは人によります。
体調が崩れかけているなら、自分は離れるほうを先にしていいと思う。
朝、出勤の準備が手につかなくなっているなら、出社できない状態から退職代行で抜け出す方法もあわせて読んでみてください。
退職そのものは2週間が原則
正社員のように期間の定めのない雇用なら、退職の意思を伝えてから2週間で雇用契約は終わります(民法627条1項)。
会社の許可がないと辞められない、ということはありません。
自分で伝えるか代行に任せるかで迷うなら、円満退職と退職代行のメリット・デメリットを先に比べておくと決めやすくなります。
有給休暇が残っていれば、その2週間に当てて出勤しないまま退職日を迎えるケースもあります。
ただし、ここは残日数や会社とのやり取り次第です。
契約社員など期間の定めがある場合はルールが変わるので、詳しくは弁護士にご相談ください。
辞める前にスマホに残しておく記録
先に離れる道を選ぶなら、出勤できるうちに集めておきたいものがあります。
辞めてから「明細どこだっけ」となる人、本当に多いんですよね。
- 給与明細:改定前後の最低でも3か月分。
紙ならスマホで撮影、Webならスクリーンショット
- 雇用契約書・労働条件通知書:時給や基本給、所定労働時間が書いてあるもの
- 勤怠の記録:タイムカードやシフト表の写真。
会社のシステムが見られなくなる前に
- 就業規則の賃金と休日のページ:月給の人は所定労働時間の計算に使う
- 自分のメモ:出勤・退勤の時刻、「時給は上げない」と言われた日付と相手の役職
集めるのは、あくまで自分の労働条件と勤務の記録だけにしておいてください。
顧客情報や社外秘の資料まで持ち出すと、別のトラブルの火種になります。
記録がそろっていれば、退職後に請求するときの土台になります。
辞めたあとの健康保険や年金の切り替えは、退職後にやるべき保険・年金・税金の手続きにまとめています。
この準備ができたら、退職を誰に任せるかを決める段階です。
申し込む前に、運営しているのが一般企業なのか、労働組合なのか、弁護士なのかを公式サイトで確かめると、上の比較表のどこに当てはまるかがわかります。
運営形態と料金をまとめて見るなら、たとえばこちらの退職代行サービス
の案内ページから確認できます。

立場別・いま取れる選択肢
まず数字だけ確かめたい人
明細と就業規則を出して、この記事の式で時間単価を出してみてください。
割れていなければ、少なくとも「違法な職場」ではないとわかります。
そのうえで、時給の安さそのものが辞めたい理由なら、転職を考えるのも自然な流れです。
差額を取り戻してから辞めたい人
記録をそろえて、まずは最寄りの労働基準監督署か、弁護士の無料相談に持ち込むのが近道です。
差額が数か月分で残業代の未払いもありそうなら、弁護士に一度見てもらう価値はあると思います。
もう職場に行くのがつらい人
記録だけ撮って、退職の連絡は人に任せる道もあります。
比較して決めたいなら、もうひとつの退職代行サービス
も並べて、運営形態と対応範囲を見比べてみてください。
差額の請求は、辞めたあと時効内に改めて相談できます。
※ サービスを使っても結果は個別の事情で変わります。
紹介内容は公開情報と利用者の声に基づく編集部の見解で、確実な退職や回収を約束するものではありません。
よくある質問
Q. パートやアルバイトでも最低賃金は適用されますか?
A. 適用されます。
雇用形態にかかわらず、雇われて働く人には地域別最低賃金が当てはまります。
研修中や試用期間中でも、原則として同じです。
Q. 最低賃金割れを指摘したら、シフトを減らされそうで怖いです。
A. その不安があるなら、先に記録を集めて、職場には言わずに監督署へ相談する方法もあります。
最低賃金法では、違反を監督署に申告したことを理由に不利益な扱いをすることを禁じています。
Q. 退職代行を使うと、差額の請求ができなくなりますか?
A. 退職したことで請求する権利がなくなるわけではありません。
ただし、一般企業の退職代行は会社とお金の交渉ができないので、請求するなら退職後に弁護士や監督署へ相談するか、最初から労働組合運営や弁護士のサービスを選ぶことになります。
Q. 自分の地域の金額はどこで確認するのが確実ですか?
A. 厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」か、各都道府県労働局のページです。
産業によっては、それより高い特定最低賃金が決まっている場合もあるので、あわせて見ておくと確実です。
まとめ:時給が上がらないのを我慢してきたのは、あなたが弱いからじゃない
最低賃金が上がったのに時給が変わらない。
それを「言いづらいから」と飲み込んできたのは、職場の空気を壊さないように気を使ってきたからだと思います。
まずは発効日と締め日を確かめて、明細で計算してみる。
割れていたら、その分はもともと受け取れるはずだったお金です。
取り戻してから辞めてもいいし、記録だけ持って先に離れてもいい。
どちらを選んでも、逃げではありません。
※ 本記事は個人の体験・調査に基づくものであり、法的助言ではありません。
個別の判断が必要な場合は、詳しくは弁護士にご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、法的・税務的な助言ではありません。
社会保険・年金・税金などの手続きや制度は改正される場合があるため、個別の判断は管轄窓口や社会保険労務士・税理士等の専門家にご確認ください。
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