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先に要点だけ。
未払いの残業代は、辞めたあとでも請求できます。
ただし期限は給料日ごとに3年で、1ヶ月分ずつ静かに消えていきます。
だから辞める前に、自分の勤怠の記録だけは手元に残しておいてほしい。
そして「辞める手続き」と「お金の請求」は、別々の窓口に分けて考えて大丈夫です。
毎日2時間ずつ残っていたのに、残業代は「みなし」で月数千円。
おかしいとは思っていても、上司の顔を見ると言い出せない。
退職そのものを切り出せずに止まっているなら、上司が怖くて退職を言い出せないときの解決策も先に読んでおくと気持ちが少し楽になります。
とにかく今は辞めることで頭がいっぱいで、お金の話まで手が回らない。
そういう状態で、この記事にたどり着いた人が多いんじゃないかな。
それで普通です。
辞めると決めた時点で、もう十分すぎるくらいがんばっています。
ここでは、辞めたあとで後悔しないために「今のうちにやっておくこと」を、なるべく少なく絞って書きます。
この記事でわかること
- 残業代の請求期限「3年」の正しい数え方
- 退職前に手元に残しておきたい記録と、残し方の注意点
- 一般の退職代行・労働組合・弁護士で、できることがどう違うか

残業代の期限は「辞めた日から3年」ではない
法律では5年、ただし当分のあいだは3年
ここ、勘違いしている人がかなり多いところです。
労働基準法115条は、賃金の請求権を「行使することができる時から五年間」で時効にかかると定めています。
ただ、同じ法律の附則143条3項で、退職手当を除く賃金については当分のあいだ3年に読み替えられています。
厚生労働省のリーフレットでも、2020年4月1日以降に支払期日が来る賃金は「賃金支払期日から5年(当分の間は3年)」と案内されています。
なお退職金は別枠で、5年のままです。
給料日ごとに1ヶ月分ずつ消えていく
大事なのは、時計が動き出すのが「退職日」ではなく「それぞれの給料日」だという点。
たとえば毎月25日払いの会社なら、2023年11月25日に払われるはずだった残業代は、2026年11月25日ごろを境に請求できなくなります。
翌月分はその1ヶ月後、さらに次の月分はその1ヶ月後。
辞めてから「落ち着いたら考えよう」と半年置いておくと、その間に6ヶ月分が順番に期限切れになるわけです。
これは正直、知らないと損しかない仕組みだと思う。
期限が迫っているときの「催告」
民法150条には、催告(さいこく=支払いの請求)をすると、そこから6ヶ月は時効が完成しないというルールがあります。
内容証明郵便で請求書を送るのが一般的なやり方です。
ただし同じ条文の2項で、猶予中にもう一度催告しても延長はされないと決まっています。
つまり使えるのは1回きりの時間稼ぎ。
その6ヶ月のあいだに交渉か労働審判か、次の手を決める必要があります。
個別の期限計算は事情で変わるので、詳しくは弁護士にご相談ください。
退職前に持ち出しておきたい勤怠の記録

辞めたあとに会社へ「記録を出してください」と頼んでも、すんなり出てくるとは限りません。
労基法109条で会社には賃金台帳などを保存する義務(当分のあいだ3年)がありますが、退職した側から手に入れるのは手間がかかる。
在職中なら、スマホ1台でできることがけっこうあります。
優先度が高いもの
- タイムカード・勤怠システムの画面:月ごとにスクショ。
打刻の修正履歴が見られるなら、それも
- PCのログオン・ログオフ時刻:会社PCの記録は自分では消せないので、何時まで動いていたかの裏付けになりやすい
- 業務メール・チャットの送信時刻:22時台に上司へ送った報告メールなど。
本文より「時刻」が残っていればいい
- 給与明細:何時間分の残業代が払われていたかの基準になる
- 雇用契約書・就業規則:固定残業代が何時間分か、所定の労働時間は何時間か
手書きのメモも捨てないで
タイムカードを定時で切らされていた、という職場もありますよね。
その場合でも、手帳や日記に「何時に出て何時に帰ったか」を毎日書いたものは、何もないよりはずっと材料になります。
家族に送った「今から帰る」のLINEも、時刻つきの記録です。
持ち出すのは「自分の勤怠」に絞る
ここは気をつけてほしいところ。
顧客の個人情報や社外秘の資料まで丸ごと持ち出すと、それ自体が別のトラブルの種になりえます。
残すのは、自分が何時から何時まで働いていたかが分かる部分だけ。
メールも、送信時刻と自分の名前が分かる範囲で足ります。
迷うものは手を出さず、あとで弁護士に「これは会社に開示を求められますか」と聞くほうが安全です。
残業代を請求するとき、誰に頼むかで「できること」が違う
ここがこの記事の本題です。
退職代行と一口に言っても、運営している主体で、会社とお金の話ができるかどうかがはっきり分かれます。
| 頼む相手 |
残業代について会社とできること |
料金の考え方 |
向いている人 |
| 一般業者の退職代行 |
退職の意思を伝えるだけ。 金額の交渉や請求の代理はできない |
退職連絡の定額料金。 追加の請求対応は含まれない |
残業代はあきらめる、または後で別に動くと決めていて、とにかく早く辞めたい人 |
| 労働組合が運営する退職代行 |
団体交渉として、未払い分の支払いを会社に求められる |
退職代行の定額料金(組合加入の形をとる)。 内訳はサービスごとに確認 |
退職と合わせて、話し合いで払ってもらえる見込みがある人 |
| 弁護士 |
請求の代理、内容証明、労働審判・訴訟まで対応できる |
事務所ごとに違う。 着手金・成功報酬の有無を見積もりで確認 |
金額が大きい、会社が支払いを拒みそう、裁判も視野に入る人 |
一般業者は「交渉」ができない
弁護士法72条は、弁護士でない人が報酬を得る目的で法律事件の代理や和解などを扱うことを禁じています。
だから一般の退職代行業者は「辞めます」と伝える使者の役まで。
「残業代も払ってください」と金額のやり取りに踏み込むと、この条文に触れるおそれが出てきます。
未払い残業代の請求まで進む見込みがあるなら、交渉権のない業者に頼んでも途中で止まる。
これは業者の良し悪しではなく、制度の線引きの問題です。
労働組合は団体交渉ができる
労働組合法7条2号は、会社が正当な理由なく団体交渉を拒むことを禁じています。
労働組合が運営する退職代行は、この団体交渉の枠で未払い分の支払いを求められる、というのが大きな違いです。
ただし、相手が払わないと言い張ったときに裁判で代理するところまではできません。
話し合いで決着しそうなケースに向いている、と考えるのが近いと思う。
自分なら、退職の連絡と残業代の話を1回で片づけたい人には、まずここを候補に入れます。
運営主体が労働組合かどうかは、公式サイトの運営者情報で確認できます。
退職代行サービス
弁護士は最後まで動ける
ここは弁護士でないと動けない。
会社が「固定残業代に含まれている」「管理職だから残業代は出ない」と反論してくるような場合、その主張が通るかどうかを争えるのは弁護士です。
労基法114条には、裁判所が未払い分と同じ額までの付加金の支払いを命じられる仕組みもあり、その請求期限も当分のあいだ3年(附則143条2項)とされています。
費用がかかるぶん、金額が大きいほど検討する価値が上がります。

立場別・いま取れる選択肢
まず辞めることを優先したい人
今日のうちに勤怠画面と給与明細のスクショだけ撮って、退職の連絡は代行に任せる。
残業代は退職後に弁護士へ相談、という分け方です。
賞与の支給日が近いなら、ボーナスの支給日と退職日の組み合わせ方も確かめてから退職日を決めると損を防げます。
退職代行サービス
退職と残業代をまとめて話し合いたい人
労働組合が運営している退職代行を選び、申し込みの時点で「未払いの残業代がある」と伝えておく。
記録の写しも一緒に渡せると話が早いです。
退職代行サービス
費用をかけずにまず相談したい人
会社の所在地を管轄する労働基準監督署や、都道府県の労働局の総合労働相談コーナーに、記録を持って相談する方法もあります。
会社への請求そのものを代わりにしてくれる窓口ではない点だけ、頭に入れておいてください。
よくある質問
Q. 退職してから1年たっていますが、まだ請求できますか?
A. 給料日から3年たっていない分は請求できる可能性があります。
ただし古い月から順に期限が来ているので、早めに記録をそろえて相談するほうが取り戻せる月数は多く残ります。
Q. 固定残業代(みなし残業)が出ていたら、もう請求できませんか?
A. 固定分の時間を超えて働いた分は、別に払われる必要があります。
契約書や就業規則に何時間分と書いてあるかが分かれ目になるので、そこを残しておいてください。
Q. タイムカードがなくても請求できますか?
A. PCのログやメールの送信時刻、手書きの記録などを組み合わせて労働時間を示す方法があります。
どこまで認められるかは事情次第なので、詳しくは弁護士にご相談ください。
Q. 一般の退職代行に頼んだあとで、残業代だけ弁護士に頼めますか?
A. できます。
辞める手続きと残業代の請求は別の話なので、退職後に弁護士へ依頼するのは普通の流れです。
請求の準備と並行して、退職後にやるべき保険・年金・税金の手続きも期限のあるものから済ませておきましょう。
まとめ:「辞める手続き」と「お金の請求」は分けて考えていい
残業代が払われていないのは、あなたの働き方が悪かったからではありません。
決められたお金が払われていないなら、それは会社の側の問題です。
辞める手続きは、民法627条1項で、期間の定めのない雇用なら申し入れから2週間で終わるのが原則。
残業代のほうは、給料日から3年という別の時計で動いています。
時計が別なので、順番も別でいい。
先に心と体を守るために辞めて、残業代は落ち着いてから弁護士に相談する。
この順番でもまったく問題ありません。
ただ、勤怠の記録を残すことだけは在職中にしかやりにくいので、そこだけ先に済ませておいてください。
焦らなくて大丈夫だよ。
※ 本記事は法令の公開情報と編集部の調査に基づくもので、個別の法的助言ではありません。
退職代行の結果を保証するものでもありません。
具体的な請求可否や期限の計算は、弁護士にご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、法的・税務的な助言ではありません。
社会保険・年金・税金などの手続きや制度は改正される場合があるため、個別の判断は管轄窓口や社会保険労務士・税理士等の専門家にご確認ください。
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