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先に要点だけ。
社内の相談窓口に相談して状況が悪くなったのは、相談したあなたのミスではありません。
法律は会社に「相談を受けて適切に対応する体制」を義務づけていて、相談したことを理由にした不利益な扱いも禁じています。
社内で解決しないと感じたら、外の窓口に移るか、もう関わらずに辞めるか。
どちらを選んでもいいんです。
勇気を出して窓口に行ったのに、数日後には加害者の態度がもっと冷たくなっていた。
「確認します」と言われたきり、1か月たっても何も変わらない。
こうなると、「言わなきゃよかった」と自分を責めてしまいますよね。
自分がこの記事でいちばん伝えたいのは、その自責は筋違いだということです。
この記事でわかること
- パワハラ防止法(労働施策総合推進法)で会社に義務づけられていること
- 社内窓口で「悪化」が起きたときに残しておきたい記録
- 総合労働相談コーナーなど外部窓口に切り替える目安
- 関わりを断って辞めるときの退職代行という選択肢

相談して悪化したのは、あなたの伝え方のせいではありません
いわゆるパワハラ防止法は、正式には労働施策総合推進法といいます。
2020年6月に大企業、2022年4月から中小企業にも、パワハラ防止の措置が義務になりました。
労働施策総合推進法30条の2で決まっていること
条文の中身を、かみくだいて書きます。
- 第1項:会社は、パワハラで働く環境が害されないように、労働者からの相談に応じて適切に対応するための体制を整えなければならない
- 第2項:会社は、労働者が相談したことや、調査に協力して事実を話したことを理由に、解雇その他の不利益な扱いをしてはならない
ポイントは、どちらも「会社側の義務」として書かれていることです。
相談した人が「うまく話せなかったから悪化した」わけじゃないんだよ。
厚生労働省の指針(令和2年厚生労働省告示第5号)でも、相談者のプライバシーを守る措置や、相談を理由に不利益な扱いをしないことを定めて周知することが、会社のやるべきこととして挙げられています。
だから、相談内容が加害者に筒抜けになった、相談後に急に配置を外された、といった流れは、制度の趣旨からは明らかにズレています。
それは異常です。
とはいえ、窓口担当者が全員悪いわけでもない
正直に言うと、窓口の担当者自身が板挟みになっているケースもあると思います。
人事が1人しかいない会社や、加害者が役員クラスの会社だと、担当者も動けないことがある。
ただ、それは会社の体制の問題です。
あなたが我慢して埋める穴ではないんですよね。
社内窓口で起きやすい「悪化」のパターンと、残しておきたい記録
よくある3つのパターン
たとえば、こんな流れがあります。
- 情報が漏れる:「匿名で」と頼んだのに、加害者から「俺のこと人事に言ったよね」と言われる
- 様子見で終わる:「本人に注意しておきます」で終了し、その後の報告がない
- 相談者が動かされる:加害者はそのままで、相談した側が異動や業務外しの対象になる
3つ目は、30条の2第2項がいう「不利益な取扱い」にあたる可能性があります。
あたるかどうかは個別の事情で変わるので、ここは断定しません。
そのぶん、次の記録が効いてきます。
今日から残せる記録
- 窓口に相談した日時・相手・伝えた内容(メールで相談したなら、そのメール自体)
- 相談後に起きた変化(発言、業務の変更、評価の変化)を日付つきで
- 加害者の言動のメモ、録音、チャットのスクリーンショット
- 体調の変化と、受診したなら通院記録
「相談の前」と「相談の後」で何が変わったかを、時系列で見えるようにしておく。
外の窓口に持っていったとき、話が一気に通じやすくなるはずです。
ちなみに記録はメモアプリでも手書きでも構いません。
会社のPCや社用チャットだけに残すのはやめておきましょう。
辞めた瞬間に見られなくなります。

外部の相談先に切り替える目安と、選び方
社内を見切っていいサイン
次のどれかに当てはまるなら、社内だけで粘らなくていいと思います。
- 相談から2〜3週間たっても、調査したのかどうかの報告すらない
- 相談内容が加害者や周囲に漏れた
- 相談した後に、自分の扱いが悪くなった
- 眠れない、朝に動悸がするなど、体に出始めている
「2〜3週間」は法律で決まった期限ではなく、編集部の目安です。
体に出ているなら、期間は関係ありません。
そこが最優先です。
受診して休む必要があると言われたら、適応障害・うつで辞めるときの退職代行と傷病手当金の使い方も参考にしてください。
外の窓口に相談したことも、不利益な扱いの理由にしてはいけない
同じ法律の30条の5では、都道府県労働局長が、パワハラをめぐる紛争について会社に助言・指導・勧告ができると定めています。
そして同条2項で、労働局に援助を求めたことを理由にした不利益な扱いも禁止されています。
30条の6では、紛争調整委員会による調停を申請する道もある。
「外に言ったらもっとひどくなるんじゃ…」という不安は当然だけど、法律はそこも想定しているんだよね。
相談先の比較
| 相談先 |
料金 |
特徴 |
向いている人 |
| 社内の相談窓口(再相談・上位部署) |
無料 |
社内の人事権で配置などを動かせる。 ただし漏洩や忖度のリスクは残る |
会社自体は信頼できて、担当者だけが合わなかった人 |
| 総合労働相談コーナー(労働局・労働基準監督署内など) |
無料 |
予約不要で、面談・電話で相談できる。 労働局長による助言・指導や、調停の案内につながる |
会社に残るか迷いつつ、まず第三者の意見がほしい人 |
| 弁護士 |
事務所により異なる(法テラスの無料相談は収入などの条件あり) |
損害賠償の請求や会社との交渉を代理できる |
慰謝料や未払い賃金まで争いたい人 |
| 退職代行 |
サービスにより異なる(公式サイトで要確認) |
退職の意思を本人に代わって伝える。 交渉ができるのは労働組合運営か弁護士運営のみ |
もう会社の誰とも話したくない、辞めることは決めている人 |
表のとおり、「会社と戦う」と「会社から離れる」は別のルートです。
どちらが正しいという話じゃありません。
いまの体力で進めるほうを選べばいい。
自分で伝えるか代行に任せるかで迷うなら、円満退職と退職代行それぞれのメリット・デメリットを比べてみてください。

立場別・いま取れる選択肢
まだ会社に残りたい人は、総合労働相談コーナーから
社内窓口とのやり取りの記録を持って、総合労働相談コーナーに相談するのが最初の一歩です。
最寄りの総合労働相談コーナーの所在地は、厚生労働省の公式サイトで確認できます。
無料なので、「これってパワハラになるのかな」という段階で行っても大丈夫です。
本気で損害を取り戻したい人は、弁護士へ
慰謝料や未払いの残業代まで求めるなら、弁護士に相談するルートになります。
ここは弁護士でないと動けない。
交渉権のない業者に頼むと、請求の段階で話が止まってしまいます。
もう関わらずに辞めたい人は、退職代行という手もある
加害者の顔を見るだけで手が震える。
上司に「辞めます」と言う場面を想像するだけで眠れない。
上司が怖くて言い出せないときの考え方は、上司が怖くて退職を言い出せない人への具体的な解決策でもまとめています。
そういう状態なら、自分で伝えることにこだわらなくていいと思います。
民法627条1項では、期間の定めのない雇用契約は、退職を申し入れてから2週間で終了すると定められています。
有給休暇が残っていれば、その2週間を有給消化にあてる形で、出社せずに退職日を迎えられるケースもあります(会社との調整や残日数によります)。
編集部が調べた範囲で選択肢に入れているのは、この2つです。
申し込む前に、運営元が民間企業なのか、労働組合なのか、弁護士なのかは必ず公式サイトで確認してください。
有給消化や退職日の調整で会社ともめそうなら、交渉できる運営形態を選ぶほうが安心かもしれません。
正直、「代行を使ったら全部解決」とは言えません。
パワハラの責任を問うことと、辞めることは別の話だからです。
ただ、辞めてから弁護士に相談するという順番もあります。
先に自分を安全な場所に移すのは、逃げじゃないと自分は思います。
よくある質問
Q. 社内窓口に相談した後で、外部の窓口にも相談していいですか?
A. 問題ありません。
社内での経緯を記録にまとめて持っていくと、話が早く進みやすいです。
労働局に援助を求めたことを理由にした不利益な扱いも、労働施策総合推進法30条の5第2項で禁止されています。
Q. 相談したせいで異動させられました。
違法ですか?
A. 相談を理由にした不利益な扱いは、30条の2第2項で禁止されています。
ただ、その異動が相談を理由にしたものかどうかは個別の事情で判断が分かれます。
時系列の記録を持って、総合労働相談コーナーか弁護士に相談してみてください。
Q. 会社が法律に違反していたら、何か処分はあるんですか?
A. 厚生労働大臣が会社に助言・指導・勧告を行い、勧告に従わない場合は企業名を公表できる仕組みがあります(同法33条2項)。
ただし、個人への損害賠償は別の手続きになります。
Q. 退職代行を使ったら、パワハラの件はうやむやになりますか?
A. 辞めたからといって、それだけで請求できなくなるわけではありません。
記録を手元に残しておけば、退職後に弁護士へ相談することもできます。
請求できる期間には限りがあるので、早めに相談すると安心です。
※ 本記事の内容は、公開情報の調査と個人の体験・調査に基づくものです。
法律の条文は2026年4月1日施行の労働施策総合推進法を参照しています。
個別の事案の判断については、弁護士または労働局にご相談ください。
まとめ:相談したあなたは、何も間違っていない
窓口に行くのは、それだけでものすごく体力を使います。
その一歩を踏み出したあなたが、結果の悪さまで背負う必要はありません。
体制を整えて、相談者を守るのは会社の義務です。
社内で守られなかったなら、外の窓口を頼ってもいいし、もう関わらずに離れてもいい。
どちらを選んでも、あなたが悪いことにはなりません。
今日できるのは、記録をひとつ残すことだけでも十分です。
※本記事は一般的な情報提供であり、法的・税務的な助言ではありません。
社会保険・年金・税金などの手続きや制度は改正される場合があるため、個別の判断は管轄窓口や社会保険労務士・税理士等の専門家にご確認ください。
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