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先に要点だけ。
ノルマのために自分のお金で商品を買わされるのは、「どこの職場でもある我慢」ではありません。
商品代を本人の同意なしに給料から引くのは、労働基準法24条1項の「賃金は全額払い」の原則に反するおそれが強いです。
「ノルマ未達なら◯円払う」と前もって決めておくのは、労働基準法16条(賠償額の予定の禁止)に触れる可能性があります。
天引きではなく自分の財布から払わされている場合も、2026年10月から適用が始まった厚生労働省のパワハラ防止指針の改正で、「商品の買い取り強要」がパワハラに当たりうると明記されました。
そして、上司に断れないまま辞めたいなら、退職代行で辞めるという道もあります。
辞めると切り出すこと自体が怖い人は、上司が怖くて退職を言い出せない人への具体的な解決策も参考にしてください。
※ 記事の内容は個人の体験・調査に基づくもので、個別のケースの法的判断ではありません。
詳しくは弁護士にご相談ください。
年賀はがき、おせち、クリスマスケーキ、恵方巻き、制服、自社の化粧品や保険。
店頭でノルマを背負っている人は、アパレル・販売職でノルマに限界な人が退職代行で抜け出す手順もあわせて読んでみてください。
「みんな買ってるから」「買わないと評価に響くから」と言われて、毎年カードの明細を見てため息をついている人、けっこう多いんじゃないかな。
自分たち編集部も、この記事のために条文と厚労省の資料を読み込んでいて、正直ちょっと腹が立ちました。
「当たり前」と思わされてきたことのいくつかは、法律の上ではまったく当たり前じゃなかったからです。
この記事でわかること
- 自爆営業が「違法」になりうる線引き(労基法24条・16条・91条、パワハラ指針)
- 給料天引きされているか、自腹か、で変わる確認ポイント
- 購入明細・指示メッセージ・給与明細の残し方
- 断れないまま辞めたい人の、退職代行での辞め方と注意点

「自爆営業」はどこから法律の問題になるのか
自爆営業というのは、ノルマや目標を埋めるために、従業員が自分のお金で自社の商品やサービスを買うことを指す言葉です。
法律用語ではありません。
だから「自爆営業=即違法」と言い切れるわけでもなくて、ここは正直に書いておきます。
問題になるのは「お金がどう動いたか」と「どう買わされたか」の2つ。
この2つで、関係する法律がぜんぜん変わってくるんだよね。
パターン1:商品代を給料から勝手に引かれている
一番わかりやすく法律にぶつかるのがこれです。
労働基準法24条1項は、こう定めています。
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
(労働基準法24条1項本文)
給料は、原則として全額を払わないといけない。
そこから引いていいのは、税金や社会保険料のように法令で決まっているものか、会社と「労働者の過半数で組織する労働組合(なければ過半数を代表する人)」が書面で協定を結んだものに限られます(同項ただし書)。
つまり、そういう協定もないのに「今月のおせち代、給料から引いといたから」は、24条1項に反するおそれが強いということ。
違反した場合の罰則も法律に書いてあって、労働基準法120条1号で30万円以下の罰金とされています。
ひとつだけ注意点があります。
最高裁は、労働者本人の同意を得て給料と相殺したケースについて、その同意が「労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき」は24条1項に違反しない、と判断しています(最高裁第二小法廷 平成2年11月26日判決)。
逆に言えば、上司に囲まれて「サインして」と言われた同意書は、この「自由な意思」の基準を満たすかどうかが争われる余地が大きい。
同意書を書かされたから終わり、ではないです。
パターン2:「未達なら買い取り」「未達なら罰金」が前もって決まっている
次はこれ。
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
(労働基準法16条)
「ノルマに届かなかったら1件◯円」「目標に足りない分は自分で買い取り」というルールが、誓約書や社内ルールとして先に決められているなら、この16条に触れる可能性があります。
16条違反は労働基準法119条1号で、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。
24条より重い扱いなんだよ。
ただし、実際に16条違反と判断されるかは、ルールの中身や運用しだいです。
ここは自分たちも言い切れないので、「可能性がある」までにしておきます。
パターン3:就業規則で「減給」として引かれている
「ノルマ未達は懲戒の対象、減給する」と就業規則に書いてある会社もあります。
これは制裁としての減給の話になり、労働基準法91条で上限が決まっています。
1回の減給は平均賃金の1日分の半額まで、総額は1回の給料の総額の10分の1まで。
ノルマ未達で毎月何万円も引かれているなら、この上限を超えていないか一度計算してみる価値はあります。
パターン4:天引きはされず、自分の財布から払っている
実はこれが一番多いパターンだと思います。
レジで自分のカードで払う、家族の名義で注文する、ネットで自分で買う。
この形だと、給料そのものは全額払われているので、24条の問題には直接はなりにくい。
だから「自腹は自分で選んだことだから仕方ない」と言われがちなんですが、2026年10月から状況が少し変わりました。
厚生労働省がパワハラ防止指針を改正して、「商品の買い取り強要等(事業主が労働者に対し、当該労働者の自由な意思に反して自社の商品・サービスを購入させる行為)に関連する言動」も、パワハラの3つの要素を全部満たせばパワハラに当たる、と明記したんです(労働政策審議会 雇用環境・均等分科会 第87回 資料5、2025年11月17日)。
3つの要素というのは、「優越的な関係を背景にしている」「業務上必要かつ相当な範囲を超えている」「就業環境が害される」の3つ。
「買わないなら査定を下げる」「買うまで帰さない」「会議で未購入者の名前を読み上げる」みたいな言動は、この3つに当てはまるかどうかを考える価値が十分あると思います。
指針は会社に「パワハラを防ぐ措置を取りなさい」と求めるもので、それ自体に罰金があるわけではありません。
それでも「国が明文でパワハラになりうると書いた」というのは、会社の相談窓口や労働局に話すときの大きな足場になります。
パワハラ防止指針の原文や改正の資料は、厚生労働省の公式サイトで確認できます。
制服や作業用品は?
制服代を自己負担させる会社もありますよね。
労働基準法89条5号では、労働者に食費や作業用品などを負担させる定めをする場合、それを就業規則に書くことが求められています(常時10人以上の事業場)。
就業規則に何も書いていないのに制服代を引かれているなら、その根拠を会社に聞いてみていいところです。
一方で、就業規則にきちんと書いてあって負担額も常識的な範囲なら、すぐに違法とは言いにくい。
ここは会社側の言い分にも一理ある場合があります。
線引きを1枚で見る:自分の自爆営業はどれに近いか
ここまでの話を表にまとめておきます。
あくまで目安で、最終的な判断は労働基準監督署や弁護士の領域です。
| 状況 |
関係する決まり |
違反になった場合 |
まず確認すること |
| 商品代を同意なく給料から天引き |
労働基準法24条1項(全額払い) |
30万円以下の罰金(120条1号) |
給与明細の控除欄/労使協定の有無 |
| 「未達なら罰金・買い取り」が事前に決まっている |
労働基準法16条(賠償予定の禁止) |
6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(119条1号) |
誓約書・社内ルール・通知文 |
| 就業規則の減給として引かれている |
労働基準法91条(減給の上限) |
30万円以下の罰金(120条1号) |
平均賃金と減給額の計算 |
| 自分の財布で払わされている |
パワハラ防止指針(2026年10月〜) |
罰則なし(会社に防止措置の義務) |
購入を迫る言動の記録 |
| 制服・作業用品の自己負担 |
労働基準法89条5号(就業規則への記載) |
記載なしなら30万円以下の罰金(120条1号) |
就業規則の該当箇所 |
表にしてみると、「天引き」と「事前に決まっている罰金」のほうが、法律で線を引きやすいのがわかると思います。
自腹のほうはパワハラかどうかの判断になるので、記録の量と中身がものを言います。

辞める前でも辞めた後でも効く、証拠の残し方
ここが一番実務的な話です。
辞めるにしても残るにしても、あとから「返してほしい」「やめてほしい」と言うとき、手元に何があるかで話の進み方がまるで違ってきます。
逆に、記録がゼロだと「本人が好きで買った」で片付けられやすい。
ここは悔しいけど現実なんだよね。
1. 給与明細(天引きされている人は最優先)
控除欄に「物販」「商品代」「立替金」みたいな項目がないか、過去の分までさかのぼって見てください。
紙なら写真、Web明細ならPDFかスクリーンショットで、自分のスマホや個人のクラウドに保存。
辞めると社内システムに入れなくなるので、在職中に取っておくのが大事です。
辞めた後に会社から受け取る書類や手続きは、退職後にやるべき保険・年金・税金の手続きリストにまとめています。
2. 購入明細・レシート・注文書
自腹で払った人は、いつ・何を・いくらで・何個買ったかがわかるものを残します。
クレジットカードの利用明細、通販の注文確認メール、社内の申込用紙の控え。
買った商品そのもの(未開封のおせちの箱や、大量の年賀はがき)の写真も、量が伝わるので意外と役に立ちます。
3. 指示・圧力のメッセージ
LINEやチャット、メールで「今週中に◯個」「足りない分は各自で」と来ていたら、日付と送り主が入る形でスクショしておきます。
口頭で言われた場合は、その日のうちに「日時・場所・誰が・何と言ったか・周りに誰がいたか」をメモ。
手書きのノートでもスマホのメモでもかまいません。
あとで書き足すより、その日に書いたもののほうが信用されやすいです。
会話を録音する人もいますが、録音の扱いはケースで変わるので、使い方は弁護士に相談するのが安全です。
4. ノルマ表・誓約書・就業規則
個人別のノルマ表や、「未達分は買い取る」と書いた誓約書があれば、それが16条の話の中心になります。
就業規則は、労働基準法106条で会社が労働者に周知しなければならないことになっているので、見せてほしいと言っていいものです。
同じ106条で、給料から天引きするための労使協定(24条1項ただし書の協定)も周知の対象になっています。
天引きされているなら、その協定があるのかどうかも確かめてみてください。
ただ、顧客名簿などの社外秘の資料まで持ち出すのはやめておきましょう。
自分のノルマと自分の購入に関するものだけで十分です。
記録がそろったら、相談先は次のあたりが現実的です。
- 天引き・罰金の話:会社の所在地を管轄する労働基準監督署
- パワハラとしての相談:都道府県労働局の総合労働相談コーナー
- お金を取り戻したい:弁護士(法テラスの無料相談が使える場合もあります)
断れないまま辞めたい人へ:退職代行の使いどき
ここまで読んで、「でも、そもそも上司に何も言えないんだよな」と思った人もいるかもしれません。
それ、すごく自然な反応だと思います。
「買えません」すら言えなかった相手に、「辞めます」を言うのは、もっと重い。
年末のおせちの話が出る前に辞めたい、でも言い出したら何を言われるかわからない。
そういう状態の人にとって、退職代行は「逃げ」じゃなくて手段のひとつです。
辞めること自体は、法律で認められている
期間の定めのない雇用(いわゆる正社員)なら、民法627条1項で、退職の申し入れから2週間がたてば雇用契約は終わるとされています。
会社の許可は条件になっていません。
契約社員など期間の定めがある場合はルールが違うので、そこは注意してください。
有給休暇が残っていれば、労働基準法39条にもとづいて2週間を有給で埋められるケースもあります。
ただ「明日から絶対に行かなくていい」と決まっているわけではなくて、そこは有給の残り日数や会社とのやりとりしだいです。
運営元で「できること」が違う
退職代行を選ぶとき、自爆営業で一番気をつけたいのがここです。
天引きされた商品代を返してほしい、という話は「交渉」にあたります。
一般の会社が運営する退職代行は、退職の意思を伝えることはできても、お金の交渉はできません。
交渉までできるのは、労働組合が運営するサービス(団体交渉)か、弁護士です。
未払いや返金の請求まで本気で進めたいなら、最初から弁護士に頼んだほうが話が途中で止まらない。
| 辞め方 |
料金の考え方 |
できること |
向いている人 |
| 自分で上司に伝える |
0円 |
退職の意思表示(民法627条) |
上司と最低限の会話ができる人 |
| 一般企業運営の退職代行 |
業者ごとに違う。 申込前に総額を公式サイトで確認 |
退職意思の伝達のみ(交渉は不可) |
とにかく顔を合わせずに辞めたい人 |
| 労働組合運営の退職代行 |
業者ごとに違う。 組合費の扱いも確認 |
伝達+団体交渉(有給・退職日など) |
有給消化や退職日の調整もしたい人 |
| 弁護士 |
事務所ごとに違う。 着手金・成功報酬を事前に確認 |
伝達+交渉+請求・訴訟 |
天引き分の返金や未払い請求まで進めたい人 |
料金を具体的な数字で書いていないのは、サービスごとに変わるうえに改定もあるからです。
申し込む前に、追加料金があるかどうかまで公式サイトで確かめてください。
交渉が必要かどうかを先に決めておくと、選び間違いが減ります。
編集部で公開情報を比べたうえで、まず候補に入れていいと考えているのはこちらの退職代行サービス
です。
運営元と対応範囲は、申込前にページで必ず確認してください。
退職代行に頼む前に、自分でやっておくこと
代行を使う場合でも、証拠は自分で集めるしかありません。
連絡が行った翌日から社内のシステムやグループチャットに入れなくなることもあるので、前の章の給与明細・購入明細・メッセージは、申し込む前に保存しておくのが鉄則です。
あとは、会社から借りているもの(制服、社員証、鍵、端末)の一覧を作っておくこと。
買い取らされた制服は自分のものか会社のものか、ここも揉めやすいので、購入時の明細があると話が早いです。
それと、自腹で買って未使用のまま積んである商品。
これを勝手に会社に送り返したり、ネットで転売したりする前に、どう扱うかは相談先に聞いてからにしましょう。
焦って動くと、こっちの立場が悪くなることがあるからです。

立場別・いま取れる選択肢
状況はひとりひとり違うので、3つに分けておきます。
どれかひとつを選ばないといけないわけじゃないです。
まだ辞めるか決めていない人:まず記録だけ始める
今日やることは、給与明細の控除欄を見ることと、今年の購入分の明細をスマホに保存すること。
それだけで、来月以降の選択肢がかなり広がります。
天引きが見つかったら、労働基準監督署に相談するという手もあります。
もう限界、上司と話さずに辞めたい人:退職代行で区切る
次のノルマの時期が来る前に区切りたいなら、退職代行に頼むのが現実的です。
即日の連絡に対応しているサービスもあるので、対応時間は申込前に確認しておくと安心です。
上で紹介したサービスのほかに、もうひとつ候補として見ておきたいのがこちらの退職代行サービス
。
2つを並べて、料金の総額と「交渉ができる運営元かどうか」を見比べてから決めるのがおすすめです。
天引き分を取り戻したい人:弁護士か労働組合へ
お金を取り戻すのが目的なら、伝達しかできない一般の退職代行では足りません。
弁護士か、労働組合運営のサービスを選んでください。
金額が数万円単位だと弁護士費用のほうが高くつくこともあるので、最初の相談で「費用倒れにならないか」をはっきり聞くのが大事です。
ここは自分たちも、もっと安く済む方法があればいいのにと思うところなんですが、交渉できる資格がない業者に頼んでも途中で止まるので、遠回りでもここは分けて考えたほうがいいです。
まとめ:買わされてきたのは、あなたが弱いからじゃない
ノルマのための自腹購入は、長いあいだ「仕方ないもの」として扱われてきました。
でも、給料から勝手に引くことは労基法24条1項でできないとされていて、未達の罰金を先に決めることは16条で禁じられています。
自分の財布で払わされるケースも、2026年10月からはパワハラになりうると国の指針に書かれました。
断れなかったのは、気が弱かったからじゃない。
断れない仕組みが職場の側にあったんだと思います。
残って声を上げるのも、記録だけ持って辞めるのも、どちらも間違いじゃないです。
まずは今日、給与明細を1枚、スマホに保存するところから始めてみてください。
よくある質問
Q. 「自分で同意した」と言われたら、もう取り戻せませんか?
A. 同意があっても、それが自由な意思にもとづくと客観的に言えるかどうかが問われます(最高裁 平成2年11月26日判決)。
上司からの圧力の中で書いた同意書なら争う余地はあるので、記録を持って弁護士に相談してみてください。
Q. 退職代行を使ったら、自腹で買った商品代も返してもらえますか?
A. 一般企業が運営する退職代行は退職の意思を伝えるだけで、お金の交渉はできません。
返金を求めたいなら、労働組合運営のサービスか弁護士を選ぶ必要があります。
Q. ノルマ未達を理由に辞めさせてもらえない、と言われました。
A. 期間の定めのない雇用なら、民法627条1項で退職の申し入れから2週間で雇用契約は終わるとされていて、会社の許可は要件になっていません。
契約社員など期間の定めがある場合は扱いが違うので、契約書を確認したうえで相談してください。
Q. 自爆営業のことを労働基準監督署に相談したら、会社にばれますか?
A. 会社に名前が伝わるのが心配なら、相談の最初にそれを伝えて、どう進むのかを確かめておくと安心です。
会社への調査や指導まで求めたいのか、まず話を聞いてほしいだけなのかも、あわせて伝えておくと話が早いです。
※本記事は一般的な情報提供であり、法的・税務的な助言ではありません。
社会保険・年金・税金などの手続きや制度は改正される場合があるため、個別の判断は管轄窓口や社会保険労務士・税理士等の専門家にご確認ください。
💡 退職代行サービスを比較検討中の方へ
サービスごとに料金・対応範囲・スピードが異なります。複数を比較して、自分に合うものを選ぶのがおすすめです。
※ 上記はもしもアフィリエイト経由のリンクです。本記事の内容を参考に、ご自身の判断でご利用ください。
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